リーディング上演「ジョン・シルバー」演出者コメント:山田恵理香(空間再生事業劇団)

電車の音、駅から聞こえるアナウンス、テントに近づくと俳優たちが小さな小屋の中で化粧をしているのが丸見え。出演前の俳優たちの準備の様子が見えているというか見せているような、上演と上演前の地続きさに驚いた。

日常から非日常へ、作品は猛烈な非日常、それは私にとっては非日常。誰のおっぱいをみたのかわからないけど、女優のおっぱいが惜しげなくそこにある。まさにぽろーんと出しいる。おっぱいの衝撃が強すぎて、作品を記憶できてない。おっぱいみせることに意味があったのかないのかも分からないレベルの衝撃だった。ひたすらにうるさくて、セリフの声と電車の音と、新宿駅のアナウンスと、外なのか中なのかわからない。とにかく凄いもんみたという衝撃だけがあった。男が客席の後ろからやってきたり、観客が掛け声をかけていたように記憶している。ものすごいライブ感で、熱量を感じたことは覚えている。これが私の初めてのテント芝居体験で、最初で最後の唐十郎氏の演出・出演の舞台の体験だ。

90年初頭、新宿西口だったように思う。ひたすらに衝撃な絵を頭の中に叩き込まれて、夢見心地で帰路につきながら「唐十郎好き」と思った。それから、唐十郎の戯曲を買い集めて劇団で本読みをしてみたりしたが、自身の劇団GIGAでは面白いけど上演する意味や意義を見出せず簡単にいうとしっくりこなくて上演しないままだった。一度は指導に携わっている専門学校で上演してみようかと、「唐版、風の又三郎」を本読みしてみたが、学生たちから「エロい!」、「イヤラシイ。」と言われて断念した。

そして、この戯曲セミナーで唐十郎を扱うことになった。私はこの機会に唐十郎を演出しなければ、もう一生演出することがないままファンとして終わっていくかもしれないと思い手をあげた。

いま、リーディングを演出しながらこんなにも肉体の作品をリーディングにするなんて無謀だなと感じている。身体性も残したリーディング上演にしたいと試行錯誤しております。唐十郎氏の言う「ぼくは祭りから演劇が発生したとみない。祭りの間、時間の裂け目のなかから演劇が産出したとみる。」という言葉に、自分がテーマとしている「祝祭性」と同じものを感じながら演出しています。裂け目の時間を「ジョン・シルバー」を通してお客様と共有できたらと思っています。

なにより、「ロビンソン・クルーソー」や「宝島」を子供の頃に繰り返し読みまくっていた私が演出するのだから何か冒険感を楽しめるようなリーディング公演になればとおもっています。劇場でお待ちしてます。

山田恵理香

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