「声で観る演劇」講師コメント:五味伸之

声で観る演劇講座の講師を務める五味伸之です。

僕は、演出者協会九州ブロックの実行委員でもあり、今回の企画もメンバーみんなで組み立ててきています。
その中で、「目の見えない人と演劇を共有する方法」ってどんなものがあるだろうか。
と考えたのが、この講座を考えたきっかけです。

僕は、障害者との演劇・ダンスワークショップなどをNPO法人アートマネージメントセンター福岡(AMCF)と一緒に行っています。
小学校の特別支援学級や、スペシャルオリンピックス日本・福岡でのワークショップを通して、演劇を分かち合うことの楽しさ、必要を感じてきました。
このワークショップのはじまりは、ホームレスの人に対して演劇でできることはあるのだろうか?と、昔の博多駅にいたホームレスの方々を見ていて、AMCFの糸山裕子さんが元ホームレスの人への自立支援WSとして福岡市内の就労自立支援センターで演劇を使ったコミュニケーション講座を開いたのが始まりです。青年団リンクのROMTの田野さんとご一緒に演劇の諸要素を分解して、コミュニケーションの要素を取り出して、人と関わるワークショップを展開していました。ホワイトボードを使用したりして、それぞれの働きにどのような要素があったかを考えることで、自分自身も演劇の新たな側面を感じ取ることができました。
未知との出会いは新しい視点を獲得することができる良い機会です。
「出会い」この言葉をテーマにして、演劇大学2010で参加者と短期間で演劇の創作を行いました。この時は、参加者それぞれの「忘れたくない景色」のエピソードを話してもらい、それをメンバーみんなで再現し構成していくという内容でした。ささやかな日常の景色を語る人、人生のどん底だった時間を語る人、大切な人が亡くなった時を語る人、演劇の場に一歩足を踏み入れた時を話す人、様々な人がいました。一人ずつのエピソードが組み合わさり、発表はとても良いものになりました。(今回モノローグ上演で演出を行う流山児祥さんに「裏技のようなやり方」という誉め言葉もいただきました)

今回の「目の見えない人と演劇を共有するには?」というキーワードは、自分が障害者との演劇ワークショップをしているときの出来事がきっかけです。ある時、全盲の方が参加することが当日わかりました。それまで一度も視覚障害者の方と演劇をしたことがなかったので、どのような内容にしたらいいかな。と、考えました。結果、当初イメージしていた内容を全体で話しながら進めることにしました。ワークショップは無事にでき、内容もよいものになりました。その体験を通して、「視覚障害の人との演劇をすることについて自分は何も考えていなかった。そもそも客席に視覚障害の方がいることなんて、考えたこともなかった。」という事実に気づかされました。それからは当事者のかたの本を読んだり先行事例をたくさん調べたりしました。2017年にKAATでダンスを視覚障害の人へ音声ガイドで楽しんでもらうというプログラムが行われていたようですが、それでも演劇の事例はなかなか見つかりません。

そういう出来事が積み重なり、唐十郎の戯曲を本読みしたとき、唐十郎の戯曲の言葉によって広がるイメージの豊富さに驚きました。過激で、猥雑で、ギャグのようなバカっぽさも持っている唐十郎を戯曲研修セミナーで取り扱うなら「イメージを刺激する言葉」をテーマにしようとなりました。
「イメージを刺激する言葉」という内容なら、視覚障害の人との講座をすることができるかもしれない。と考えました。
そこから、映画の音声ガイドの活動をしている方にお話を聞きに行ったりしながら、今回の講座の内容を準備しています。
一人一人がイメージを刺激する言葉は何なのか?そして、その所以はなにか?なんて考えだすときりがないですが、声だけで観ることのできる景色がどのようなものになるか、今から楽しみにしています。

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